コンテスト

Keone Pearson、31歳。212を支配し続ける男

TEXT: KG | 2026年8月12日

Keone Pearson 公式インスタグラムより


横川尚隆選手が9月に挑むMen’s 212というカテゴリを一言で説明するなら、こうなる。「キオニ・ピアソンと、それ以外」。

連載第2回は、その頂点に3年間座り続ける絶対王者を取り上げる。

クラシックの4位より、212の頂点を——キャリアを決めた転向

ピアソンのキャリアは2016年、NPCリー・ヘイニー・ゲームズの優勝から始まる。翌2017年、出場2戦目でプロカードを獲得。ジョージア州史上最年少のIFBBプロだった。

意外に思われるかもしれないが、彼の出発点は212ではなくクラシックフィジークだ。2018年のプロデビュー戦タンパプロで2位、2019年にはニューヨークプロ優勝、アーノルドクラシック4位、そしてオリンピアのクラシック部門でも4位。当時のクラシックはクリス・バムステッドが君臨し始めた時代で、ピアソンはその「上位の一角」だった。

しかし彼は2020年、212への転向を選ぶ。理由は明快で、クラシックの体重制限では自分のポテンシャルを出し切れないと感じたからだ。転向初戦の2020年シカゴプロをいきなり優勝。ただしオリンピアの壁は厚く、2021年は14位に沈む。そこから2022年6位、そして——

王朝の3年間——番狂わせから「基準」になるまで

2023年、ピアソンは当時のディフェンディングチャンピオン級の存在だったショーン・クラリダを僅差の激戦で下し、初の212オリンピア王者となる。下馬評を覆す戴冠だった。

だが本当に驚くべきはその後だ。2024年、彼は前年とは「別人」と自ら語るパッケージを持ち込んだ。大腿四頭筋のサイズと絞りが大幅に向上し、X-フレームが完成。クラリダがより丸く、硬く、密度の高い身体で挑んでもなお届かない、圧倒的な差での連覇だった。212で連覇を達成したのは、2012〜2018年に7連覇したフレックス・ルイス以来のことだ。

そして2025年、さらにサイズを増して3連覇。3年連続王者はケビン・イングリッシュの記録に並び、上にいるのはもはやルイスただ一人となった。

この3年間で212の意味が変わった、と言っていい。2018年以降、毎年王者が入れ替わる「椅子取りゲーム」だったこの階級に、ピアソンは「基準」を打ち立てた。いま212の審査員が何を評価するかは、ピアソンの身体を見ればわかる——挑戦者全員が、彼との差分で採点される時代だ。

王者の視線は、すでに212の外にある

ところが、この絶対王者には公然の「浮気」がある。オープン転向問題だ。

ピアソンは以前から「僕の最終目標はミスター・オリンピア(オープン)を獲ること」と公言してきた。2025年オリンピアの直後にはプラハプロでオープンのステージに立ち、転向の観測を自ら煽ってみせた。前例もある。2021年の212王者デレク・ランズフォードは、オープン転向からわずか2年で2023年のミスター・オリンピアを制し、史上初の「2階級オリンピア王者」になった。ファンがピアソンに同じ物語を重ねるのは自然なことだ。

ただし、本人は急いでいない。「212でまだ10ポンド(約4.5kg)は乗せる余地がある。出し切る前にオープンへ行って、ただ順位に並ぶつもりはない」——これが彼の一貫した理屈で、今年5月のポッドキャストでも「212であと2シーズンくらい」という趣旨の発言をしている。つまり2026年、彼は212にいる。モチベーションを疑う声に対しては、記録が答えになるだろう。目の前には4連覇=イングリッシュ超え、そしてその先にルイスの7がある。

挑戦者側から見れば、これは残酷な報せだ。「そろそろオープンに行ってくれるのでは」という期待は、少なくとも今年は叶わない。

横川との比較——王者を測ることは、自分を測ること

ここからは本シリーズ恒例の視点、「横川尚隆とどう噛み合うか」だ。

まず正直な現在地から。初出場の横川にとって、ピアソンは「勝つ相手」である前に「距離を測る基準」だ。3連覇中の王者に初年度で肉薄した例は、この階級の歴史にほぼない。だがそれは悲観材料ではない。全挑戦者がピアソンとの差分で採点される以上、「王者から何枚目に並べたか」がそのまま横川の世界での座標になる。デビューイヤーの目標設定として、これほど明確なものさしはない。

興味深い共通点もある。ピアソンは168cm、横川も同じく160cm台。そしてピアソンのキャリアを決定づけたのは「体重制限のあるクラシックから、より自分を出し切れる212へ」という階級選択だった。骨格に対して筋量で勝負するタイプが、ルールの中で最大化できる場所を選ぶ——横川が212を主戦場に定めたことと、構造はまったく同じだ。王者の歩みは、挑戦者の戦略の正しさを裏書きしてもいる。

そしてもうひとつ。ピアソンが2021年のオリンピアで14位に沈み、そこから2年で頂点に立った事実は覚えておいていい。この階級では、初年度の順位は終着点ではなくスタート地点だ。

次回は、その王者に3年連続で敗れ続けてもなお最前線に立つ男——「ジャイアント・キラー」ショーン・クラリダを取り上げる。


出場資格情報は記事公開日時点のものです。本記事は主催者発表および各種報道をもとに構成しており、選手の評価に関する記述には編集部の見解を含みます。誤りがあった場合は修正のうえ、記事末尾に履歴を残します。

IRON PRESS 編集部

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